『天気の子』スタッフ
<監督・脚本>
新海誠
『君の名は。』『秒速5センチメートル』
<制作>
コミックス・ウェーブ・フィルム
<主題歌>
RADWIMPS
「愛にできることはまだあるかい」
「グランドエスケープ feat.三浦透子」
<声優>
醍醐虎汰朗
森七菜
本田翼
小栗旬
吉柳咲良
平泉成
梶裕貴
倍賞千恵子
花澤香菜
木村良平
『天気の子』あらすじ&PV
「あの光の中に、行ってみたかった」
高1の夏。離島から家出し、東京にやってきた帆高。
しかし生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事は、
怪しげなオカルト雑誌のライター業だった。
彼のこれからを示唆するかのように、連日降り続ける雨。
そんな中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は一人の少女に出会う。
ある事情を抱え、弟とふたりで明るくたくましく暮らすその少女・陽菜。
彼女には、不思議な能力があった。
引用:『天気の子』公式サイト
『天気の子』ネタバレ無しレビュー
©2019「天気の子」製作委員会
個人的評価: B
思春期の純粋なまでの暴走、細かい粗は勢いでぶっ飛ばす!
『君の名は。』でジブリに迫る大ヒットを飛ばした新海誠監督の最新作がついに公開!
これは行くしかない(いつも同じこと言ってるけど笑)
って事で観てきました。
#天気の子 感想
✅映像めっちゃ綺麗、特に雨
✅帆高くんの暴走具合はぶっ飛んでる笑
✅陽菜さんは神秘的な可愛さ
✅警察は可哀想
✅本田翼はそこまで下手じゃない
✅『君の名は』とは異なった作風
✅新海監督らしいラストだったまとめ:賛否両論になるのも分かる(自分は賛6否4ぐらい) pic.twitter.com/CxA4cd4EDl
— ハスケ@アニメ・漫画・映画LOVE! (@hasuke_hobby) July 23, 2019
上記のツイートの様に面白かったけど、ちょっと粗が多い作品だったなぁという感想です。
何といっても映像描写がダントツに凄い!特に雨。
新海監督の『言の葉の庭』でも雨の映像表現に驚かされましたが、今回はさらに凄かった。前が綺麗な雨のイメージなら今回は荒々しい、何だったら怖いとまで思える雨の描写は感動しました。
そして東京の描写です。自分は大阪在住なのでそこまで東京には詳しくないですが、かなりのリアルさを感じました。背景の書き込みが凄くて、主人公たち以外のモブたちも生きて生活しているのが伝わってくるんです。
そして、これは悪い点にもなるかもしれないですが主人公穂高のぶっ飛んだ思考と行動も面白い。ネタバレ有りの方で詳しく語ろうと思いますがなかなかの暴走具合でした。そのムチャクチャさは嫌いじゃないよ(笑)
全体のストーリーは人によって賛否両論になっていますね。自分は中盤までは退屈でしたがラストの展開は好みでした。野球でいったら膠着状態が続いた最終回にホームランでサヨナラ勝ちした感じ(分かりづらくてすみません笑)
悪かったところは脚本の粗が目立った点。結局○○はどうだったの?とかご都合主義だなと感じられてしまう部分があったのは否めません。
そして、歌が多すぎたのも引っかかりました。『天気の子』では主題歌1曲、挿入歌4曲。要所で流れるんですがそれが多すぎて印象に残らないんですよね。曲自体はどれも良い曲です。でも覚えているのは主題歌ぐらい。正直、途中で挿入歌流れた時に「またか・・・」と冷めちゃいました。
公開前からPVの本田翼さんの演技が酷すぎると炎上して、yahoo映画のレビューが全削除になる事件が起こってしまいましたが、実際に声優陣の演技はどうだったのか。
個人的には「まぁまぁ」という印象。今作は主要メンバーは俳優が固めており、本職声優は脇役で出る程度。心配してましたがそこまで悪くなかったです。特に批判されていた本田翼さんは滑舌こそアレでしたが意外に良かったです。
どちらかと言えば気になったのは小栗旬さん。ちょっと違和感を感じてしまう演技だったかなぁ。
主人公とヒロイン役の声を担当したのは2000人のオーディションから選ばれた醍醐虎汰朗さんと森七菜さん。まだ二人とも10代で俳優としても経験浅いみたいですが声優としてはたどたどしくも頑張っていて好印象でした。
これははっきり言って『君の名は。』の方が面白かったです。もちろん作品としてのベクトルが違うので同じ土俵で考えるのも違うんですけどね。
ただ脚本としての完成度が『君の名は。』はほぼ完ぺきでしたが、『天気の子』はちょっと粗が目立つ脚本でした。そして終盤の盛り上がりも『君の名は。』の方がうますぎた。
先述したように『君の名は。』と『天気の子』は作品としてのベクトルが違うので、観に行く際は『君の名は。』のような映画と思わずに行った方が良いですよ。
色々とツッコミどころも多い映画でしたが、それを超える面白さは確かにありました。何より圧倒的な映像技術には本当に脱帽です。手放しでオススメとは言えないですが、少しでも興味があるならぜひ映画館で鑑賞してみてください。
下にネタバレ有りのレビューもあるので、映画鑑賞済みの方はぜひご覧ください!
<どんな層にオススメ?>※個人的見解
・ファミリー層:△
意外に裏社会の部分が出てきたり
子供にはあまり向いていないかも
・ティーン層 :◎
思春期の主人公とヒロインがメインなので
親しみやすい作品と思う
・カップル層 :◎
分かりやすい恋愛作品なので
デートに最適
・一般男性層 :△
年齢が高ければ理解しづらいかも
細かい粗は許せるタイプなら〇
・一般女性層 :〇
恋愛中心のシンプル構成
映像も綺麗なので合いやすく思う
・『君の名は。』好き層:△
君の名はのようなエンタメ感が無いので
同じような作品を期待していくのはオススメできない
『天気の子』ネタバレ有りレビュー
※がっつりネタバレしてるので映画を観てから見るのをオススメします!
穂高のぶっ飛び具合が魅力的!
©2019「天気の子」製作委員会
主人公穂高のぶっ飛び具合は良かったですね~
思春期ならではの暴走ではあるんですが、それにしても凄かったですよね。シンプルに言えば自己中心的なんですが、一度決意したら意地でも曲げない部分は格好良さすらあります。
そもそも始まりからして凄い。地元の島を飛び出して東京に家出するも全くのノープラン(笑)しかも普通の家出と違い、がっつり東京で働いて住む気なんだからね。
この家出の理由は映画では語られませんが小説版では父親と衝突した事が原因のような描写があるようです。ラストで普通に家に帰って高校卒業までは暮らしているので虐待などの「どうしても家にいられない」ワケでは無かったと思われます。
それなのに16歳が親に無断で家から飛び出し、東京で働いて暮らしていこうとするのは結構ぶっ飛んでません?笑
そして、個人的に一番ぶっ飛んでるなと思ったシーンは須賀に拳銃を向けたシーン。
確かに陽菜を助けたい気持ちは分かる。しかも須賀はその前に自分を追い出しているし、「目を覚ませ」と殴るし、イラつきもあったんでしょう。
でも恩人相手に銃を向けるのはぶっ飛びすぎ。ちなみに追いついた警察にも向けてます。その後に銃は捨ててるので撃つつもりは無かったんでしょうが、引き金に指をかけてるので何かの間違いで撃ってしまう可能性は高かったんですよね。
ただこのぶっ飛んでいる思考・行動こそが思春期の純粋さであり穂高の魅力だと思います。極端な話、自分と陽菜以外はどうなってもいいという利己的な気持ちは嫌いでは無いんですよね。一見大人しそうなのになかなかの牙を持った主人公でした。
ひたすら可哀想な警察たち
『天気の子』の「敵役」は警察でした。
でもこれって可哀想なんですよね。だって警察は何も悪い事はしていない。治安維持のための当たり前の行動なんです。
警察からしたら穂高は「行方不明届の出ている16歳」「拳銃所持」という一刻も早く捕まえないといけない最重要人物、しかも警察署から「逃走」、バイクで「交通法違反」(これは夏美もだけど)、線路を走って「往来危険罪」と犯罪のオンパレード(笑)
あげくに穂高を逃がすために殴られ、髪を毟られ・・・物語としても悪者にされる理不尽。
穂高や観客からしたら陽菜を救うためと分かっていても、他の登場人物からしたら「女の子を助けるために空に行く」なんて言われても信じられないよね(笑)
平泉成のベテラン刑事なんて良さそうなキャラだったし、もうちょっと警察陣営も描写して欲しかったところです。あれだけ悪者にして主人公たちが逮捕されてからは何の出番も無しは酷い。
目立った脚本の雑さ
この『天気の子』でこの「粗さ」は大きなマイナスポイントでした。
まずは描写不足。
例えば陽菜と凪がどうしても二人で暮らしたかった理由。「大人が関わると離れ離れにされる」と言うシーンはありましたが別にそうなるとは限らないですよね?風俗で働いてまでそれを守ろうとするには描写不足を感じます。全体的にもうちょっとキャラを掘り下げてほしかったですね。
そしてご都合主義。
これは多かったなぁ。一番引っかかったのが、陽菜がビル屋上の祠から天に昇った夢を見た主人公が、警察から逃走してその祠を目指すシーン。「?」となった人も多かったんじゃないかな?なぜそこから自分も昇れると思ったのか?警察から逃げちゃったらその手段が駄目ならもう終わりなのに。まぁなぜか昇れたんですけどね(笑)
他にも警察署から逃走したら偶然バイクに乗った夏美が通りかかる、線路を走っていても作業員が止めない(声は掛けるが)等々。
その辺は「こまけぇこたぁいいんだよ!!」って事ですな(笑)
思春期の暴走と純粋さ
©2019「天気の子」製作委員会
この作品のメインとなる二人はまだ幼さの残る思春期真っ只中の年齢。それだけにこの二人の考えと行動は疑問を感じるものが多かったです。
結局主人公とヒロインたちの行動は正当性が無いんですよね。でも二人の世界はそれが正しい。その辺は新海監督もあえて露骨に描写していたと思います。
特に顕著になったのは穂高と陽菜と凪が3人で逃避行してから。
警察に職務質問されて逃げるために陽菜は力を使い、トラックに雷を落として炎上させるシーンがありました。
三人はその後ホテルに逃げて「危なかった~」「でも逃げれて良かったね~」と安堵して笑い合います。でも冷静に考えるとトラックが炎上して街は大惨事だし、下手したら死人も出ているかもしれません。しかし三人には関係ないんですね。そこまで考えない、自分たちが無事ならそれでいい。
思春期の純粋さと愚かさ、そして怖さが上手く描かれていました。この刹那的な描写は映画『テルマ&ルイーズ』を思い出したなぁ。
上でも書きましたが穂高は特に暴走しており、誰にでも拳銃を向けるほどです。もし線路を走っている途中に作業員に止められたら作業員にも拳銃を向けていたでしょう。
大人を信じずに稚拙な考えで突き進む。褒められたものではないですけど思春期特有の純粋さゆえと思うとある種興味深いものを感じました。
ラブホテルで3人で泊まった夜、穂高は「神様お願いです、僕たちをずっとこのままでいさせてください」と願います。でもこの時点で所持金は半分を切っており、次の日からどう生活するのか分からないレベル。そんな状況でも神に祈るだけというのが稚拙ながらもその純粋さに感動も覚えたシーンでした。
まさかのセカイ系のラスト
ラストは驚きの「陽菜を取り戻した代わりに東京は雨が降りやまず水没する」。まさにセカイ系ですね。
主人公たちは再会して「僕たちはきっと大丈夫だ。」でEND。単純なハッピーエンドでは無いですね、個人的には特殊なバッドエンドと思っています。
でもこのラストは自分は大賛成!
だって陽菜を助けてその後何もなくハッピーエンドだったら、そんなご都合主義すぎる展開は最悪中の最悪。今までが全て茶番になりますよ。世界を代償にしてでも二人でいる事を選んだからこそ感動も生まれたんです。
「世界がどうなろうと関係ない、自分たちが幸せならいい」こう書くと酷い言葉もかもしれませんが、自分たちの幸せを自らの手で掴み取ったのだから否定も出来ないです。それだけの二人の純粋な決意は素直に感動しましたよ。
ただ特殊なバッドエンドだと考えているのは、今後東京は完全に沈没して、その後もおそらく陽菜が行くところは常に雨が降り続けるのでしょう。それは多大な数の人に迷惑をかけ、死んだ人もいるかもしれない凄惨な状況です。陽菜はそれらをずっと背負いながら生きていかないといけないのです。
なので今後の二人を考えると自分はハッピーエンドでは無いと思いました。
ところで最後穂高と会う前に陽菜は祈りを捧げていますよね?あれは何を祈っていたのか?他の人の考察を見ていると色々な考えに分かれているようです。
自分は「晴れてほしい」と思いながらも力は使わず他の人を犠牲にしてでも生きる道を選んだ陽菜の懺悔的な祈りかと思っていました。でも穂高に会いたいと祈っていたなど色々な考えがあるようで。皆さんはどう思ったか良かったら教えて下さい。
『天気の子』次回作は?
まぁ無いですよね(笑)
そういうタイプの作品では無いですし、ED後にこれ以上ストーリーを進めるのは蛇足です。
となると新海監督の次回作はいつでしょうか?今作も興行収入は黒字レベルまで余裕でいきそうなので次回作は作られると思います。
『言の葉の庭』(2013年)→『君の名は。』(2016年)→『天気の子』(2019年)
と来てますので次回作も3年後の2022年の可能性が高いと予想します。
<まとめ>『天気の子』感想・レビュー
©2019「天気の子」製作委員会
長々と語ってきましたが、良かった部分と悪かった部分が明確にあるので賛否両論になるのは仕方ないかなという映画ですね。
でも思春期特有の純粋さの描写、ハイレベルな映像技術は素直に評価しています。悲しみも含まれるラストも感動しました。
新海監督の次回作もぜひ期待したい!そう思える映画です。