アニメ映画『きみと、波にのれたら』(以下きみ波)が2019年6月21日(金)公開されました。
『夜は短し歩けよ乙女』湯浅政明監督、『若おかみは小学生!』吉田玲子脚本のオリジナルアニメ。全国299スクリーン公開という大規模上映です。
そして21日(金)~23日(日)の初週末の興行収入が発表さましたが・・・0.8億円という惨敗の結果に。爆死ですね。
これがどれだけの失敗かというと同程度の327スクリーンで同じ21日に公開した『ファブル』が3.9億円の興行収入で約5倍の数字をマーク。
また15日(土)公開のアニメ映画『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』は『きみ波』の10分の1の31スクリーン公開ながら15・16日の2日間の興行収入が1億円、同日公開の『ガールズ&パンツァー最終章第2話』は60スクリーンで1.4億円になっています。
300スクリーンを超える大規模上映は大作として期待されている映画が選ばれ、興行収入は「10億円」は超えたいところ、「30億円」を超えると成功という感じです。
『きみ波』はおそらく10億円には届かないどころか、小規模上映の映画にも負けそうな勢いです。
※2019年12月現在に判明している最終興行収入は2.5億円・・・予想通り大爆死です。
一体、何が失敗の原因だったのか?大きく3つに分けてみました。
・作品のターゲットが不明瞭
・声優のキャスティングがひどい
・TVアニメの映画化以外は厳しい
一つずつ考察していきたいと思います。
作品のターゲットが不明瞭
まずは『きみ波』のアピール要素を簡単にまとめます。
・サーファーのリア充カップルの物語
・彼氏が亡くなるも彼女の前にまた現れる
・主演は片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)
・ヒロインは川栄李奈(元AKB)
おそらくカップル層がターゲット?それにしてはキャストは微妙だけど・・・
客層別に考察してみます。
①カップル層
恋愛メインのストーリーは〇。
アニメ映画というのはウケがイマイチ。
メイン声優二人がアイドル(俳優)というのも微妙。
②ファミリー層
アニメ映画は〇。
恋愛ストーリーはキッズも親も興味が無い。
③ティーン層
有名人の声優キャストは〇
アニメ映画というのはウケが悪い。
同じキャストで実写ならワンチャンあったかも。
④一般男性&女性層
キャスティング、ストーリー、アニメ映画、全ての要素がイマイチ。
⑤アニメ好き層
本職声優が使われていない。
リア充カップルの話。
この二要素の時点で興味なしの人が多い。
⑥映画好き層
アニメ映画のウケが微妙。
メイン声優二人が本職俳優じゃないので興味がわきづらい。
このように見事にどの層もターゲットから微妙にずれるんですよね。
しいて言えばエグザイル好き、川栄さん(AKB)好きの方にはウケが良いでしょうが、どっちにしても声だけじゃなく顔が見たいところでしょう。
・アニメ映画の時点でウケはやや悪い。
・声優キャスティングが実写向き。
この2点が痛いところだったと思います。
声優のキャスティングがひどい
今作のキャストは
雛罌粟港 :片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)
向水ひな子:川栄李奈(女優、元AKB)
雛罌粟洋子:松本穂香(女優)
川村山葵 :伊藤健太郎(俳優)
といった感じで見事に本職声優を除いたアイドルや俳優を起用したキャストでした。
しかも今回の4人は声優経験はほぼ無いようです。片寄さんと松本さんにいたっては初挑戦・・・
なぜ本職声優ではなく、不慣れなアイドルや俳優が選ばれるのか?それは知名度が高いので話題性・宣伝性があるからです。
このように話題性・宣伝力のために演技力などは度外視で選ばれるのが当たり前になってきているアニメ映画の声優ですが、それが逆効果になって初めから敬遠されるようになってきている状況もあるんです。Twitterなどではよくそういう批判が見られるようになっています。
例えば同時期公開の『メン・イン・ブラック:インターナショナル』は吹き替えに「吉本坂46」が全員出演決定となり炎上しました。
今作も「またこういう声優起用か・・・」と最初から敬遠された部分もあると思います。実際、興行は大失敗していますし。
今作は特に酷い、EXILEとアニメって相性悪いでしょ、『HiGH&LOW』のアニメ化ならともかくね・・・EXILEのファンがアニメ映画観に行こうとはなりにくいかと。
また、川栄さんのできちゃった婚が発覚、しかも旦那が二股、それを巡ってTwitterで炎上したり川栄さん自身の人気が急降下したのも影響あったと思います。
ただ、決して選ばれた方々が悪いわけではなく、キャスティングした制作側が悪いんですけどね。
TVアニメの映画化以外は厳しい!?
現在アニメ映画はまさに黄金時代!
『ディズニー』『ユニーバーサル』などの洋画はもちろん『名探偵コナン』『ドラえもん』といった邦画も大人気、実写映画よりヒットするのも当たり前になってきました。
そして『ソードアート・オンライン』『Fate』などの深夜アニメの劇場版もヒット、先述した『青春ブタ野郎』シリーズや『ガールズ&パンツァー』も少ない上映館数ながら好調な興行を見せています。
しかし、一方ではオリジナルアニメや小説原作のアニメなどのTVアニメ化していない作品の劇場アニメは失敗・爆死する事が多くなっています。
2019年に入ってからも『あした世界が終わるとしても』『バースデー・ワンダーランド 』など相次いで爆死しています。2016年に公開されたオリジナルアニメ映画『ポッピンQ』は記録的な大爆死でした。そして『きみ波』もオリジナルアニメです。
アニメ映画がヒットしているといってもあらかじめ放送や配信で人気になりファンが観に行く部分が大きいわけで、いきなり映画からの勝負ではほぼ負けているのが現状です。
それでもなぜここまで作るのか?それは2016年に公開したオリジナルアニメ映画『君の名は』が興行収入250億円という大ヒットしたからでしょう。それだけ『君の名は』の成し遂げた偉業の影響は大きかったと思います。
『君の名は』に続いての大ヒットを狙っての映画は多かったと思います。オリジナルは自由に作れる楽しさもありますしね。
しかし、そう上手くはいかないものです。『君の名は』はブームになった勢いもありますがシナリオも優秀でしたし声優も経験ある俳優や本職声優も使っていました。それに続くもヒットしなかった作品はその辺が駄目な事が多いので致し方ない結果と言えます。
『きみ波』のこれからは・・・?
引用:映画『きみと、波にのれたら』公式サイト
現在(2019年6月24日)『きみ波』の映画レビューサイトの評価を観ると3.4/5(映画.com)3.3/5(yahoo映画)という微妙な評価になっています。
これでは今後口コミで人気が広がるという事はおそらくないでしょう。
正直、なぜこの映画を300スクリーンという大規模上映にしたのか苦しむところです。もっと小規模なら爆死まではいかなかっただろうに・・・
EXILEや川栄さんを起用したからにはっていうところなんですかね?結局、企画の段階からそもそも失敗だったと思います。制作陣も今後は同じ轍を踏まないようにしてほしいところですね。
個人的にはオリジナルアニメ映画を全否定する気はないので、練られた脚本、話題性ではなく演技力のあるキャラに合った声優起用、この2点がしっかりとした作品を観せてほしいと思います。
ただ『君の名は』の幻影を追うのはそろそろ止めときません?